研究概要 |
本研究では、頑健な国際金融システムのアーキテクチャーの再構築をめざして、東アジアにおける国際通貨協調について、特に、為替制度採用における「協調の失敗」に焦点を当てて、研究した。協調の失敗を解決するために、東アジア諸国において共通の通貨バスケット制度の採用が考えられ得る。本研究では、アンカー通貨を明示的に導入しながら、最適通貨圏を実証的に分析することができる「一般化購買力平価モデル」を利用して、分析を行った。すなわちドルと円とユーロの通貨バスケットに対する東アジア諸国通貨の為替相場のデータを利用して、error correction modelによってこれらの為替相場の定常性を分析した。 本年度においては、国際コンファレンス(ANU Conference @Kuala Lumpur,2003年3月27-28日;APEF Conference,2003年9月19-20日;KIEP seminar @Seoul,2003年11月3日;Asian Crisis V Conference @Chuncheon,200年12月9日)で分析結果を報告することによって分析を精緻化した。「一般化購買力平価モデル」に基づいて行った実証分析の結果から政策提言を提示した。政策提言としては、東アジアにおける国際通貨協力について、最適通貨圏の条件を満たすという意味で、より広範な国々が国際通貨協調に参加しやすくなるためのドルと円とユーロで構成される通貨バスケットの構成比率を提言できる。また、ドルの構成比率が100%であるケースと比較することによって、ドルに依存した国際通貨体制と通貨バスケット制度のどちらが、各国に特異なショックを吸収することができるという意味で、より広範な国々で国際通貨協調を行いやすいかについて答えられる。そこから、現状のドルに依存したアジア経済に対する政策的インプリケーションが得られた。
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