本研究では、semi-strongフォームの効率性仮説のテスト、すなわち、公開情報の影響を調べるイベント・スタディにより効率性の検証を行うとともに、市場の効率性を高めるための方策として特に個人投資家の参加を取り上げた。1996年から98年まで、あるいは96年から02年までの期間において、わが国の長期国債(現物)の利回り、あるいは長期国債先物のボラティリティがマクロ経済変数のアナウンスやニュースの影響をどのように受けているかを、現物のtickデータ、あるいは先物の日次データを用いて調べ、市場の効率性をテストした。 tickデータによる分析では、期待形成を表す要素が平均回帰的であると仮定するアフィン・イールド・モデルを用い、日次データによる分析では、平均からの乖離で測ったアクチュアル・ボラティリティと・オプションから計算されるボラティリティとを用いて、マクロ指標の発表のうち中予想されない部分、つまりサプライズが利回りの変化に与える影響を計測した。得られた結果は一様ではないものの、いずれも市場に非効率性が存在することを示唆している。 本研究とこれまでのテストの結果を合わせ考慮すると、国債流通市場では情報が効率的に取り込まれていないとみられ、その理由として、政府や中央銀行の保有割合が高く、情報を効率的に利用しようとする民間主体の行動が反映されにくいことが考えられる。そこで、本研究では国債市場に個人投資家を呼び込むための改革を取り上げ、今後の国債管理について持つ合意を探った。
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