研究概要 |
今年度は前年度に作成されたモデル(一般化ユーザー・レヴェニュー・モデルI)の理論的精緻化を行った.(1)金融企業の危険回避的態度,(2)金融資産及び負債市場における情報の非対称性,(3)金融企業間の戦略的相互依存性等を明示的に考慮した不確実性動学モデルとして厳密に定式化するとともに(conjectural user-revenue model,以下CURM),一般化ユーザー・レヴェニュー・プライスとして,stochastic user-revenue price(以下SURP)とconjectural user-revenue price(以下CURP)を導出した.また,不完全競争指標として,generalized Lerner index(以下GLI)を導出した.SURPは従来のユーザー・コストを(1)と(2)を加味して拡張したものであり,CURPはそれらに加え,(3)も考慮して拡張したものである.GLIは従来のラーナー指数を(1)〜(3)を考慮できるように発展させたものである.理論的検討の結果,SURPは従来のユーザー・コストの割引率(参照利子率)をCURMから導出されるrisk free rateに置き換えたものに等しいこと,CURPと限界可変費用は等しく,両者の符号に基づく産出・投入の分類は一致することなどが明らかになった. こうした前年度モデルの理論的精緻化に加え,その再推定も行った.前年度の推定では,実物固定投入要素については最適化を図っていないにもかかわらず,その固定費用を差し引いた利潤を使用して推定を行っていた点を改め,それを差し引かない利潤を用いて推定し直した.それに併せて分析も再度行ったが結果は前年度とほぼ同様であった.
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