本研究プロジェクトは、4年間実施した。金融サービスの利用者として、一般家計と中小企業に焦点を当てて分析を行った。まず、近年の金融の規制緩和が主として一般家計へどのような影響を与えているかを分析した。具体的には、住宅ローンの問題を取り上げた。住宅ローン市場では、1990年代中頃から自由化が進み、さらに、特殊法人改革の一環として、住宅金融公庫の廃止が決まるなど大きな変化が起こっている。しかし、自由化が個人に十分な利益をもたらしているとは限らない。特に、住宅金融公庫の廃止は、金融機関が少ない地方での住宅ローン市場の寡占化を促進する可能性がある。この点を、実証的に分析したのが、「利用者の視点から見た住宅金融改革の成果と課題(前編)-新商品の登場と借入金利の変化を中心に-」(『住宅金融月報』2004年7月)、「利用者の視点から見た住宅金融改革の成果と課題(後編)-地域の住宅金融市場への影響を中心に-」(『住宅金融月報』2004年8月)などである。一方、中小企業金融に関しては、リレーションシップバンキングの機能強化に関して分析を行った。『RPレビュー』に発表した論文「地域金融システムと中小企業金融」では、情報通信技術が発達しても、中小企業金融における情報問題が完全に解消することはなく、中小企業金融は地域的な性格を持ち続けるであろうと議論している。わが国ではメガバンク再編が最終局面に到達しつつあるが、そのプロセスでソフト情報が失われる恐れがあり、それを補完するためにも地域金融機関の機能強化は重要であると結論している。
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