研究課題
基盤研究(C)
日本の所得格差の変化の特徴は、所得格差拡大の主要な原因は人口高齢化であり、年齢内の所得格差の拡大は小さいということにある。また、生涯所得の格差を代理する消費の格差の動きは、所得格差の動きとパラレルか、所得格差の拡大よりも急激であることも特徴的である。この点は、とくに50歳未満の年齢層で顕著に観察される。この現象を説明する仮説としては、(1)所得階層間移動の可能性が若年層で低下、(2)失業率の上昇を通じた生涯所得格差の拡大、(3)将来の所得格差拡大予想、(4)消費者信用(金融市場)や家族の所得保障機能の低下、(5)遺産相続を通じた資産格差の拡大という可能性がある。日本では年齢内所得格差の安定にもかかわらず、所得格差拡大に関する認識が高まっている。その乖離の原因は、将来における所得格差拡大を予想している人々が多いことにある。所得格差拡大の認識は高学歴層で多いが、高学歴層は所得格差拡大を問題でないと思っている人々の比率も高い(富岡・大竹(2005))。Ohtake and Tomioka(2004)は、所得再分配政策の支持は、現在の所得水準だけではなく、将来の所得水準と失業経験、失業不安が重要な決定要因になること、危険回避度は、所得格差拡大を問題視し、所得再分配政策を支持する重要な選好パラメターであることを示した。また、危険回避度の高い人々は、幸福度が低いこと、所得格差の拡大は危険回避度の高い人々にとっては、幸福度を引き下げる要因になることを、実証的に明らかにした。
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