研究課題/領域番号 |
14530111
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩田 健治 九州大学, 大学院・経済学研究院, 助教授 (50261483)
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研究分担者 |
田中 素香 東北大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20094708)
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キーワード | EU(欧州連合) / ICT(情報通信技術) / IT革命 / 長期波動 / 資金循環 / 証券市場 |
研究概要 |
本研究は、(1)欧州経済のICT化の現状とその影響について長期波動論視点から分析する実物分析、(2)資金循環勘定を用いて、EU域内各国と日米の部門別資金過不足の長期時系列比較分析を遂行する金融分析、(3)EUが追求する「ICT化と成長企業のための金融インフラ形成」という新たな次元の政策に対する評価から成る。本年度は、これら3つの基本線に沿いつつ、以下の3点を明らかにした。第1に、EU経済の分析に関しては、田中がユーロ導入後のEU経済について、とりわけ国際通貨としてのユーロの利用という側面から分析し、ユーロの国際通貨として利用が当初の予想より限られたものとなっていることを外国為替市場調査データより明らかにした。これによりEU域内の資金循環分析の際の対外的制約条件の一部が明らかにされた。第2に、資金循環分析に関しては、岩田が主要国における長期資金循環データの一層の加工につとめ、それらは岩田健治編著『ユーロとEUの金融システム』に収録された。さらに日本金融学会秋季大会でパネル報告(招待報告)を行い、ユーロ導入後の証券市場の現状についてICT化との関連を踏まえた分析を行うと同時に、本研究の基本仮説である「金融構造変容交差」について問題提起を行った。第3に、EUの政策に関しては、岩田が「ラムファルシー委員会報告」にみられるEU証券立法過程の近年の改革についてとりあげ、その所産である新しいEU証券関連法制について詳細な分析を行い、それらが欧州経済のICT化や成長金融インフラ形成のためのEUの政策に他ならないことを明らかにした。さらにドイツ・ハンブルグ大学のH.シュミット教授と欧州の証券取引所の最新の動向、とりわけ新興成長企業向けにEU各国で創設された「新市場」の一部の閉鎖の動きについて、その問題点を中心にディスカッションを数次にわたって行い、次年度以降の研究で特に着目すべき視点を共有化した。
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