研究課題
本研究は、(1)欧州経済のICT化の現状とその影響に関する実物分析、(2)EU域内各国と日米の部門別資金過不足の長期時系列比較分析を遂行する金融分析、(3)EUによる「ICT化と成長企業のための金融インフラ形成」政策の評価からなる。本年度は日経NEEDSのFinancialQUESTのデータが容易に入手できたため、過去2年度の研究を補完する現地調査を欧州およびアジアで追加的に実施することができた。欧州においては、田中、岩田が、エストニア・リトアニア・ベルギーを訪問し、聞き取り調査を実施した。バルト海諸国の成長戦略は、昨年度調査を実施した中東欧のコア諸国の外資による実物投資中心のそれとは大きく異なり、EU(欧州連合)のICT化を通じた成長戦略(=「リスボン戦略」)に比較的忠実に沿う形でICT化を成長の軸に据えていることが明らかになった。ベルギーでは、中間見直し作業が進む「リスボン戦略」の評価を中心に、意見交換が行われた。さらに本研究の完成度を高めるために、アジアのIT先進地域であるシンガポール・タイ・香港において、岩田が同様の聞き取り調査を実物側(工場)および金融機関において実施し、ICT化が進む先進国・途上国経済における成長戦略と金融インフラに関するEUとアジアとの地域間比較を行った。以上で得られた知見をもとに、代表者(岩田)と分担者(田中)は、11月および1月に東京で打ち合わせおよび研究成果報告を開催し、また11月会合ではHWWA前副所長のH-E.シャーラー教授との意見交換・レビューも行った。以上の取り組みにより、岩田は資金循環分析のとりまとめを完了し、田中はEUのICT化戦略=リスボン戦略の見直しに関する最新の「コック報告」までを取り込んだ分析を完了した。3年間の研究成果は、報告書にて取りまとめられている他、現在改訂中の代表的テキスト『現代ヨーロッパ経済』(有斐閣アルマ)などにも全面的に反映されることになる。
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研究年報 経済学(東北大学) Vol.66,No.3.
ページ: 55-69
欧州中央銀行の金融政策とユーロ(田中素香, 春井久志, 藤田誠一編著)(有斐閣) 第9章所載
ページ: 163-184