研究課題
本研究は、近年の急速な国際資本移動の拡大下において、各国の金融システムあるいは金融業に同質化の傾向が見られるのか、それとも独自性が残るのかという問題を検証することを目的としていた。対象とする国は、主として、日本、アメリカ、EU諸国であった。平成14年度、15年度の研究の結果、次の二点を解明することができた。第一に、投資信託に代表される国内的な資金形成と活況が、90年代における国際資本移動拡大の基盤にあったことを明らかにした点は、本研究の課題達成のために重要であった。第二に、国際資本移動の拡大に表される金融のグローバル化において、各国の金融業は投資銀行業を中心とする国際金融業(その中味は、M&Aやトレーディング、IPO、デリバティブといった新しい投資銀行業務)を競争力の源泉のひとつにしていることである。これらを踏まえて、本年度は次の点を明らかにすることができた。第一に、投資銀行を起動力とする企業買収合併運動の展開は、金融業レベルでのドラスティックな再編を引き起こし、その影響は80年代の米国、90年代のヨーロッパを経て、今世紀には日本に及んできているという意味で、この運動は今後の各国金融業・金融システムの変革の行方を探るうえで重要な意昧を持っていると言える。このような事態は、歴史的位相の共通点と相違点の解明を分析の視点として加える必要性を物語っている。第二に、投資銀行を中心とするアングロサクソン型の国際金融業の展開は、金融業・金融システムレベルにとどまらず、産業レベルに及んできているということである。このことは、産業および金融レベルにおけるグローバル・メガ・コンペティションを引き起こしている。このような事態の展開は、金融面と産業面における重層的な再編運動のミクロ的な分析の必要性を物語っている。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
現代金融論 第1章所載(川波洋一, 上川孝夫編)(有斐閣)
ページ: 2-22
現代金融論 第4章所載(川波洋一, 上川孝夫編)(有斐閣)
ページ: 65-105
欧州中央銀行の金融政策とユーロ 第9章所載(田中素香, 春井久志, 藤田誠一編著)(有斐閣)
ページ: 163-185