平成14年度は2年計画の初年度であり、理論研究および実証研究のそれぞれにおいて、予定した年次計画に従い作業をすすめた。 理論研究では、貸出市場の情報非対称性に基礎をおく関連諸モデルの整理検討を行い、中小企業向け貸出市場の特性である借手の多様性をとらえるため二次元非対称情報という概念に注目した。このアイデアは、従来いくつかの論文でふれられた考えであるが、十分にその性質が検討されていなかった。二次元非対称性を組み込んだ逆選択モデルを定式化し、借手間の内部補助のパターンに焦点をあて、資金配分の非効率性の性格、信用保証の効果などを検討した。また理論モデルに対する他機関の専門家のコメントやセミナーでの論文報告を通じて得た批判をもとに、モデルの改善をおこなった。さらに、理論モデルをもとにして、実証研究の基礎となるモデルヘの展開も試みた。 実証研究においては、次年度の計量分析の基礎となる統計データの収集と入力を以下のように行った。まず信用保証協会の資料をもとに都道府県ごとに保証の利用、代位弁済などに関するデータの入力をおこなった。ついで、全国の都道府県の中小企業政策を担っている部局に制度融資の実態を示す統計資料の提供を依頼し、その結果、全国のほぼすべての都道府県について制度融資の実績ベースの金額を得ることができた。各種制度融資には名称が異なっても機能的に似通ったものもあるので、それぞれの性格を検討し、その性格ごとの分類、集計を試みている。制度融資については全国にわたる包括的なデータが不十分であったが、これらのデータを利用する各種のクロスセクション分析によって、政策効果を検討できる。
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