研究概要 |
経営破綻した金融機関の業務をいつ停止させるべきか、どのような方法で整理することが望ましいかという問題を、金融行政当局、破綻金融機関の融資先、および受け皿となる金融機関に与える影響の観点から、とくに信用金庫・信用組合を対象として、理論的・計量的に分析することが、本研究の目的である。 平成14年度は、破綻信用金庫・信用組合事例データベースの作成を第一の目標として研究作業を進めてきた。1992年以降の破綻信用金庫・信用組合を対象として、破綻前の財務の時系列データを収集し、データベースを作成しつつある。破綻金融機関は、170件になった。 データベース作成作業と並行して、一般金融機関の営業停止時点の最適性に関する一般理論を検討した。1990年代後半以来、金融システム再生のための諸施策がとられてきた。それらの施策の効果を検討する作業の一環として、信用金庫・信用組合の破綻処理を対象として、a.破綻金融機関の営業停止時点の最適性、b.預金保険機構の金銭贈与・資産買取の合理性、c.救済金融機関の経営への影響について、経済理論的に検討した。先行研究論文の中では、L. Guo, "When and why did FSLIC resolve insolvent thrifts?"がわが国の制度環境・政策課題に有益なモデルを提供するものであったが、このモデルを信用組合・信用金庫という特定の分野の制度的・経営的環境に合わせた修正モデルを作成し、データに基いて実証的に分析し、倒産処理の合理性を検証することが、平成15年度の研究課題である。
|