経営破綻した金融機関の営業停止および整理の合理的な決定について、理論的計量的に分析することが、本研究の目的であった。信用金庫・信用組合を分析対象として研究を行ったが、主として相対的な規模の大きさの観点から、信用金庫の分析を優先させた。分析期間は、バブル崩壊以後の1992年から2002年までであるが、1998年以前と1999年以降とでは、金融規制環境が大きく異なるため、1999年以降を主たる対象とした。1999年から2001年の期間に破綻した信用金庫25庫と、比較対象として、存続している信用金庫からランダムに選んだ25庫とを計量的に比較するという方法を採用した。 主要な分析結果は、以下の通りである。 (1)資産規模に関しては、破綻信用金庫と存続信用金庫との間には統計的に有意な差は認められなかった。一方、自己資本比率、業務純益、不良債権額については、有意な差が存在した。したがって、破綻信用金庫の破綻原因は、規模の面での劣位ではなく、不良債権を生み出した経営判断の誤りにある可能性が高いことが推測できた。 (2)営業停止の意思決定について、両グループを対象とする多項ロジットモデルを推定し、自己資本比率が決定要因になっていることを確認した。 (3)破綻金融機関の整理コストとして、預金保険機構から(救済)合併信用金庫に対する金銭贈与額および破綻信用金庫からの資産買取額の合計値を用いた。破綻信用金庫と存続信用金庫のデータとを対象として、整理コストを被説明変数とするトービットモデルを推定した。説明変数として、不良債権額、地域(大都市圏)ダミーが説明変数として有意であったが、結局は、自己資本比率で代表でき、その係数が負であることを確認した。 機械費用最小化の観点からの分析が行えなかった点は、データの制約が主因であるとはいえ、以上の分析の限界である。また、時系列的分析および信用組合の分析が、次の課題である。
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