研究計画調書で記したように、一般に、証券化証券の原資産には、繰上げ返済やデフォルトが起こり、その結果、証券化証券のキャッシュフローが大きく変化する。したがって、証券化証券の価格付けにおいては、繰上げ返済やデフォルトによって生じるキャッシュフローの変化を考慮するべきであり、そのためには、オプション理論が適用されなければならない。この観点の下、本研究では、繰上げ返済やデフォルトの意思決定に関して合理的なモデルを構築し、それに基づいて証券化証券を価格付けする枠組みを提唱することを目的とする。 研究計画調書で記したように、平成14年度においては、金利を唯一の不確実性要因とする証券化証券のモデルを構築した。具体的には、証券化証券の代表例であるcollateralized mortgage obligations(CMO)を念頭において証券化証券の原資産が数千のローンのポートフォリオであるとみなし、各ローンは、市場金利の低下による期限前返済のベネフィットが期限前返済に伴うコストより大きければ期限前返済されるよう設定した。この設定の下で、研究計画調書で記したextended tree methodを適用し、CMOの価格を求めるモデルを構築した。ちなみに、このモデルは、研究代表者が"Securitization of Assets into Multiple Securities : An Option Theoretic Valuation"で提唱したモデルをより現実的にしたモデルであると言うことができる。 研究代表者は、上記のCMOモデルを提唱した論文を既に書き上げており、現在、世界的な一流学術誌に投稿中である。
|