研究概要 |
本研究では、「中小企業と金融市場」と「経済発展と金融制度」という問題を理論的かつ実証的・歴史的に分析している。これらの問題はともに、不完全情報や取引費用が大きな役割を果たす分野である。また中小企業対策は重大な政治問題であり、経済と政治が密接に関連している。一方、開発金融においては、農村での信用形態など金融制度のあり方が経済発展を左右することになる。本研究では、研究代表者が拠点リーダーを務める早稲田大学21世紀COEプログラム「開かれた政治経済制度の構築」(21COE-GLOPE)の研究課題と関連させて、制度分析的な視点を重視している。本年度の研究内容は次の通りである。 (1)中小企業金融に関しては、まず、鈴木久美氏との共著論文「中小企業と貸付市場:貸付金利に関するパネルデータ分析」を倉澤資成編著『市場競争と市場価値』(日本評論社)に発表した。また武士俣友生共編『中小企業金融入門』(東洋経済新報社)を改訂し、第2版として刊行した。 (2)21COE-GLOPEとの関連した研究では、2冊の専門書を監修し、それぞれに以下の論文を著した。(1)河野勝・清野一治編『制度と秩序の政治経済学』(東洋経済新報社)の第1章「新しい政治経済学と開かれた政治経済制度」においては、なぜ政治経済学的アプローチが必要か、新しい政治経済学の方向、などについて論じた。(2)須賀晃一・若田部昌澄編『再分配とデモクラシーの政治経済学』の第1章においては、経済発展と所得分配、政治制度と経済発展、教育制度などに関して政治経済学的な視点から問題提起を行った。(3)他にJoseph E.Stiglitz and Carl E.Walsh, Economics, 3rd editionの翻訳を進めており、その一部を『スティグリッツ 入門経済学 第3版』(東洋経済新報社)として刊行した。
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