研究概要 |
本研究の目的は,金融・資産管理教育が家計の金融資産選択行動に及ぼす影響を明らかにすることである。家計が最適な金融資産選択を行う上で必要かつ重要であると考えられる知識(教育内容)について検討し,知識の獲得の前後における金融資産選択行動の変化について,金融資産管理シミュレーション・ゲームによって得たデータを用いて分析を行う。本年度の目的は,従前の研究を発展させる過程として,知識の獲得の前後における金融資産選択行動の変化を,家計の選択するポートフォリオの効率性という観点から分析することである。 資産選択の効率性についての指標としては,平均分散アプローチによって導出した効率的フロンティアからの距離を用いる。Panel Probit分析の結果からは,ゲーム参加者のうち,新たに習得した知識をより理解している者,過去の投資資産数の多い者,今後,株式市場が好転すると予測している者が選択したポートフォリオの効率性は上昇し,資産選択の直前の株価の上昇は,ポートフォリオの効率性を低下させることが分かる。各ゲーム参加者の過去のポートフォリオの運用成績は,ポートフォリオの効率性に影響を与えない。この点では,行動ファイナンスで指摘される研究と異なった結果となった。しかし,全体としてモデルのあてはまりは良くなかったことから,今後の課題として,Simon(1955)やKahneman and Tversky(1979)の導入した限定合理性を考慮したモデルの適用や,behavioral portfolio theoryが想定するメンタルアカウンティングやアカウントごとのリスク選好を考慮することについても検討が必要である。
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