電子マネーの発行体は預金取扱金融機関類似の組織であり、新たな支払手段供給機関として世界的にも重要性を増しつつある。本年度は、わが国ならびにアジア諸地域(シンガポール、香港、中国)の電子マネー発展の実態を把握するとともに、それらがナローバンクとして機能する可能性について考察した。裏付けのために、これら諸地域に出向き、実態把握に努めた。 また、金融システムテム安定化政策の一環として預金保険制度が、世界的にも重要性を増しつつあるが、預金保険制度はモラルハザードを誘因する危険が高いと言われる。そこで、これに代わって、ナローバンクによる安全な支払決済手段の提供が重要であるとの観点から、預金保険制度を持たない豪州やニュージーランドのプルヘデンシャル・ポリシーの実態を明らかにした。両国の政策のポイントは、銀行破綻や金融システム不安定化が顕在化する事前的確率を低めることにあるが、他方で両国ともに今郵便局を拠点としてた金融サービスが民間銀行によって提供されている。これが一種のナローバンクとして機能し、預金保険制度に代わる安全な預金債務の提供に貢献しているのではないかと解釈できる。この点を確認するべく、両国の金融当局に出張し、調査を行った。
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