平成15年度に豪州とニュージーランドの実態調査を実施し、これに基づいた論文(平成16年度成果)で、これら諸国は可能な限りで銀行等の自己規律と市場規律を活用することにより金融システムの安定性を確保することとし、モラルハザードを誘発しかねない預金保険制度は現在有さないが、他方において事実上のナローバンクと言えるものの存在も確認し得るとの指摘を行っている。豪州のコモンウェルス銀行はかつて中央銀行機能と郵便貯金機能を併せ持ち、民営化された今も郵便局で業務を継続し、ニュージーランドでは金融自由化の結果として外資系銀行が支配的となり、国民のための公的な銀行が新たに設立され、ナローバンクとして意図されたものではないものの、事実上その役割を果たしている面があることを指摘した。このように、事実上のナローバンクとして存在するとしても、それらは何ほどか公的なネットワークなり公的資金の支援が不可欠であることを示唆している。 発展途上の電子マネーはITを基盤としてナローバンク機能を持つ可能性があるが、それも運用次第であることは否定できない。欧州大陸では電子マネーの発行が基本的に銀行等に限定され、発行主体は銀行であるとの位置づけでプルーデンシャル政策が採られている。しかし、見返り資金(フロート)そのものの運用に対しては特別の制約は課されていない。電子マネー諸形態の今後の多様な発展の中でナローバンク勘定としての純化が求められる可能性を否定できない。この点に関連した実態調査が16年度末3月に実施される。なお、日本の決済専用預金口座(平成17年度4月導入)の運用のあり方についても考察中であるが、制度詳細を見極めて検討する予定にある。
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