本年度は前年度に開発した信用リスクモデルを元にモデル評価の方法を開発し、その後信用相関やデフォルト後の回収率(LGD)の計算モデルについて、実際にデータを用いて解決を試みた。また、信用リスクモデルの評価基準をBIS規制や銀行の自己資本などの、金融ルールの策定に適用することを金融庁や国際決済銀行バーセル委員会などに働きかけた。その結果、本研究であげた学術的成果を実社会に反映することができた。 今年度になし得た学術的な成果は以下の点である。 (1)信用リスクモデルの評価基準・評価方法の確立 2006年に発行されるBIS規制においては、信用リスクモデルを各銀行が独自に開発することが可能となる。各国の行政当局は各銀行が開発したモデルの妥当性を検証・評価し、認可しなければならないが、その評価方法が確立されていなかった。本研究では信用リスクモデルの精度を厳密に定義し、精度に与えるファクターを整理することによって、モデルの事前評価・事後評価の方法を網羅的に提案した。この成果はBIS会議において報告し、実際のBIS規制に反映される。 (2)デフォルト時損失率(LGD)モデルの開発 これまでの信用リスクモデルは主にデフォルト(倒産)の発生確率を予測するものであった。しかし、実際の信用リスクを算定するためには、デフォルト確率だけではなく、デフォルトしたときに貸出債権のうちどの程度回収不可能になるかという、デフォルト時損失率を計算できなくてはならない。日本においてはLGDの実績データの不備のため、このモデルの構築は進んでいなかった。本研究ではImpliedLGDの概念に基づき、日本でも計算可能なモデルを開発した。 これらの研究成果は金融庁などの関係当局に置いてすでに公認済みであり、またCRD運営協議会へのフィードバックも行っている。その成果は(1)については金融庁ワーキングペーパーに(2)についてはISM Research Memorandumに発表した
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