信用相関やデフォルト後の回収率(LGD)の計算モデルについて、実際にデータを用いて解決を試みた。とくにこれまで統計モデルを検討していたが、より現実的に計算可能な確率モデルの開発を中心に行った。また、信用リスクモデルの評価基準をBIS規制や銀行の自己資本などの、金融ルールの策定に適用することを金融庁や国際決済銀行バーセル委員会などに働きかけた。その結果、本研究であげた学術的成果を実社会に反映することができた。 なし得た学術的な成果は以下の点である。 (1)信用相関モデルの作成 貸し手にとって貸出ポートフォリオ全体のリスク量を知る必要がある。そのためには、個々の借り手の信用リスクだけではなく、借り手間の相関構造を知る必要がある。これまでも信用相関を確率モデルから求める方法は存在したが、確率測度が実際と違うなどいくつかの問題があった。本年度は実務的に利用可能な、確率モデルによる信用相関を求めるモデルを作成した。 (2)デフォルト時損失率(LGD)モデルの開発 これまでの信用リスクモデルは主にデフォルト(倒産)の発生確率を予測するものであった。しかし、実際の信用リスクを算定するためには、デフォルト確率だけではなく、デフォルトしたときに貸出債権のうちどの程度回収不可能になるかという、デフォルト時損失率を計算できなくてはならない。日本においてはLGDの実績データの不備のため、このモデルの構築は進んでいなかった。本研究ではImpliedLGDの概念に基づき、日本でも計算可能なモデルを開発した。 これらの研究成果は金融庁などの関係当局に置いてすでに公認済みであり、またCRD運営協議会へのフィードバックも行っている。その成果は(1)についてFSA research reviewに、(2)についてはISM Research Memorandumに発表した
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