平成14年度は、ソニーとシャープを中心とするアメリカにおけるマーケティングの実態について以下の取りまとめを行った。 シャープに関しては「アメリカ市場におけるシャープのマーケティング」の論文を京都大学経済学会誌「経済論叢」に掲載した。ここでは資本力に乏しいシャープは、現地生産が日本の同業他社に比較して出遅れ、79年10月、メンフィスに生産工場Sharp Manufacturing Co. of Americaを建設した。この工場はシャープの生産事業部として機能し、輸出マーケティングの限界を克服した。ここではカラーテレビ、電子レンジ、液晶プロジェクターなど現地向け製品を生産した。アメリカ工場は消費地生産の工場とよばれ、アメリカやヨーロッパへ製品を再輸出するため設立されたタイの工場とは異なり、アメリカ販売会社の販売を支援するという位置づけで設立された。現地生産をベースとしたマーケティングは、一段と深くアメリカ市場に根を下ろしたマーケティングの展開を可能としたことを具体的に分析した。 ソニーに関しては「アメリカ市場におけるソニーのマーケティング」の論文をとりまとめた。その成果は「経済論叢」に掲載する予定である。「需要のあるところで生産する」ことを標榜するソニーは、日本の同業他社のどこよりも早く、72年8月にアメリカのサンディエゴ工場を稼働した。カラーテレビの組立から開始し、74年6月テレビ用ブラウン管工場の建設によって、カラーテレビの一貫生産を行った。77年2月にはアラバマ州のドーサンにビデオテープの専門工場を建設し、ここを拠点にアメリカのみならず日本、ヨーロッパにも輸出をした。このように他社に先立つアメリカでの生産は、貿易摩擦や円高による為替問題の解決にいち早く対応でき、アメリカ市場での競争優位を実現した。輸出マーケティングの段階に引き続きアメリカでの生産工場設立の段階に於いても、ソニーの自社ブランドの確立とマス・マーケティングを最優先したマーケティングの展開は、90年代のソニーのグローバルマーケティングの基礎を築いたことを具体的に解明した。
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