平成16年度は、松下電器と三洋電機を中心とする国際マーケティングの一形態であるマルチナショナル・マーケティングの実態について明らかにした。 松下電器産業の販売会社アメリカ松下電器(MECA)がアメリカ市場で本格的にテレビの開発、製造、マーケティングを開始したのは、1988年に「北米テレビ事業部」を新設したときに始まる。アメリカで生産された大型テレビの一部は、主としてアメリカ市場を中心に販売されたが、その一部は日本やヨーロッパにも輸出され、グローバル・マーケティングの萌芽が見られた。松下電器の海外生産が拡大する中で、アメリカで生産された製品と本国からの輸出品が、同一市場で重複するケースが増えたため、日本からの輸出と現地生産を一元的に管理する必要性が生じ、1989年松下電器と松下電器貿易の合併を行った。このことによって製販一体の世界戦略を図ると同時に、アメリカを中心とする地域統括会社の機能を強化した。 三洋電機がアメリカ市場でマルチナショナル・マーケティングを本格的に展開するようになったのは、フィッシャーブランドと三洋ブランドによるマーケティング戦略を正面に掲げてからである。エマーソン電機の傘下にあったフィッシャー社で生産された製品は、フィッシャー・コーポレーション(FC)を通して販売された。日本から輸出されたサンヨーブランドの製品はサンヨー・エレクトリック・インク(SEI)を通して販売されていた。しかし、1987年にこの両社の合併によって、サンヨー・フィッシャー・コーポレーション(SFC)となり、サンヨー、フィッシャーの両ブランドのマーケティングを一元化し、全米をカバーする販売網とサービス網を確立した。三洋電機は現地主義を重視し、1988年地域統括本杜としてアメリカ現地法人会社「サンヨー・ノースアメリカ・コーポレーシヨン」(SNA)を設立した。SNAの設立により、現地市場のニーズに即応した戦略を立てることが可能となった。
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