研究概要 |
本研究では、20-30年間の我が国における流通(卸および小売)の変化をパネルデータを用いて実証的に検討した。 小売部門:零細過多であると指摘されてきた我が国の小売店舗数は、1982年の172万店をピークに、1997年には142万店まで減少している。本研究では、1979-97年の都道府県別パネルデータおよび同時期の京都府の市区別パネルデータを用いた実証分析を行い、店舗密度(または店舗数)がいかなる要因に規定されているかを検討した。主要な結論は、この時期の小売店舗数の減少は、乗用車の普及(2,554万台から4,861万台)および住戸あたり面積の拡大(96m^2から106m^2)という2つの要因によって説明されるというものである。これら要因によって効率上必要な店舗数が減少したのである。その意味で、この時期の店舗数の減少は、変化する社会経済環境への適応の結果として捉えることができる。このような変化の中で、店舗あたりの来店客数が減少していることを後継者が認識した結果、後継者不足が生じていると思われる。 卸売部門:「長くて非効率」と形容されてきた我が国の流通経路が1970年代以降どのように変化したかを、同時期の業種別パネルデータを用いて検討した。具体的には、各業種の流通経路の長さが、チャネル運営に必要な情報の種類と各段階で発生する情報伝達の制約によって、いかに規定されるかを実証的に検討した。主要な結論は、メーカーによる系列化の進展にもかかわらず、衣服・身の回り品を除けば、流通経路は必ずしも短くなってはいないというものである。その理由として、流通段階で要求されるサービスがより高度になっており、それを適切に供給するために、多くの流通業者が必要とされているということが考えられる。
|