研究概要 |
日本の流通システム変革は,流通機能・活動の垂直・水平レベルの統合と分離を伴うかたちで進行しており,それが企業間関係ならびに流通構造の急激な変化を導いているが,それは個別企業の経営効率性とマクロ的に見た流通効率性にどのような影響をあたえているのだろうか?本研究は,この点への理論的・実証的解明を目的としており,1990年代以降,最近の日本の流通システム変革を理論的・実証的に総括する研究の一環をなすものである. 本年度の研究として,まず,(1)「水平レベルの集約化」(企業間の水平統合の経済効果),(2)「垂直レベルの短絡化」(流通機能の統合と分離の経済性),(3)流通チャネルの「オープン化」(流通チャネルの競争分析),(4)「意思決定の統合的調整」(リンケージ効果とブロケージ効果)に関する既存研究の整理・展望をおこなった。第2に,流通経済研究所,セゾン総合研究所,経済産業省,公正取引委員会などから関係報告書の入手,担当者からのヒアリング,メーカーや流通業者へのヒアリングによって,上記4点に焦点を絞った実態調査をおこなった。 第3に,流通機能・活動の垂直・水平レベルの統合と分離に関する理論分析の成果を4本の論文にまとめた。(1)「市場の組織構造と競争政策」という論文で公表,(2)"Royalty Structure in Franchising Contract",(3)"Vertical Separation and Product Quality"という2本の論文を2002年度日本経済学会春季大会(小樽商科大学)において報告,(4)"No Mix and Match of Perfect Complements"という論文を2002年度日本経済学会秋季大会(広島大学)において報告した。なお,(3)の論文は,その内容を発展させて,"Social Benefit of Vertical and Complementary Merger"というあらたな論文を追加的に作成し,2003年度日本経済学会春季大会(大分大学)で報告する予定になっている。
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