研究概要 |
本年度は,本研究費補助金を受ける前に行っていた文献サーベイに基づく理論研究を継続するとともに,企業インタビューや実地調査を行うことによって事例の実証研究を精力的に行った。2002年3月には2週間のヨーロッパ視察(研究期間以前のため自費)を行い,EMS(Electrical Manufacturing Service)企業調査のほかA社のヨーロッパ調達本部ならびにA社の別国にある主要生産拠点を訪問した。国内では関西のB社や関東のC社,D社,E社のインタビューを行い貴重な資料を頂戴した。また,他研究者とのあるプロジェクトでアンケート調査を行い,日本の電子電機業界および自動車・同部品業界のSCM実態も把握するよう努めた。さらに,電子電機業界におけるグローバルSCM関連部署の部長クラスの人々を集い,私的なシンポジウムも開催し情報の共有化を図った。それらの成果は著書・論文等でも表したが,2002年12月に慶應大学三田校舎で開催された「多国籍企業研究会30周年記念大会:21世紀多国籍企業の新潮流」での報告「多国籍企業の戦略と再編」でも表した(この報告内容は定評ある雑誌『世界経済評論』の近刊でも公開されると同時に,別途,1冊の著書として公刊される予定である)。 2002年度の研究で判明したことはグローバルSCMが予想されたほど進展していないという事実である。本社と販社,工場などの内部組織においてさえ情報の共有化が十分に図られておらず,むしろSCM導入に際して抵抗が生じている。ましてや,小売業者や納入業者を巻き込んだ「一気通貫」のSCMにおいては緒についたばかりである。それでも先駆的にグローバルSCMに取り組んでいる企業では,在庫の削減,リードタイムの短縮,小売業者の満足度増大などの成果が表れており,グローバルSCMが重要であることが再確認された。
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