研究概要 |
本年度は,文献サーベイに基づく理論研究を継続するとともに,企業インタビューや実地調査、内外研究者との交流、企業関係者との懇談会を行うことによって、グローバルSCM事例の実証研究を精力的に行った。 とりわけ、シャープの事例(『ケースブック国際経営』所収)と東芝PCの事例(『グローバルSCM』所収)によって、グローバルSCMの成立背景、導入プロセス、成功の必要条件、導入成果、課題などが明らかになった。たとえば、グローバルSCMの成功条件には(1)精度の高い需要予測、(2)柔軟な生産体制、(3)効率的な調達システム、(4)シームレスな情報共有化などが不可火であることが明確になった。また、それらの前提として(5)トップマネジメントの強い意志とリーダーシップが重要であることも判明した。 その他、調査した企業は、日産自動車、三菱自動車、東芝半導体、キヤノン、富士ゼロックス、オムロン、イオンなど数多い。今後、それらの事例もまとめていく予定であるが、今年度の成果はグローバルSCMの分析視角を得たことである。それは、情報システム的視角でもなければロジスティクス的視角でもない。「顧客志向」に基づくグローバル・マーケティング視角が重要であるということである。グローバルSCMの直接的な成果は「在庫を減らしながらリードタイムを短縮すること」であるが、それによって顧客満足を高めるという視点がなければ、単なるコスト削減問題に矮小化されるであろう。今後もこの分析視角に基づき調査・研究を進める予定である。
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