1.1985年から1998年にかけて東証一部・二部上場企業の財務・株式データを用い、メインバンクの形態がガバナンス上の役割を通じて、どのように企業の収益性に影響を与えているかを分析した。具体的には、メインバンクからの借入比率をメインバンクと借手との距離を測定するメジャメントと考え、ROAなどの収益性指標に対する効果を測定した。主たる発見は、メインバンクとの関係は、借手企業の収益性を低下させる、ということである。この結果は、hold-up costの存在を示している。さらに興味深いことに、1990年代に入るとメインバンクを複数持つ企業では、そうでない企業に比べてメインバンクの収益性に対する負の効果を軽減できることが実証結果から解った。 2.1985年から1998年度で東証に上場する企業のデータを用い、各投資主体(個人、外国人、持合目的の保有、機関投資家)がどのような基準でどのような銘柄選択を行っているかを実証分析した。ガバナンス上特に重要なのは、持合目的の株式保有においてその保有構造に時系列的にどのような変化がおきているか、また、機関投資家の株式保有(非保有)が何らかガバナンス上の役割をはたしているか、といった点である。我々の研究結果では、機関投資家・持合保有ともに、他の要因をコントロールすると、収益性が低く、借入の多い財務的に脆弱な企業の保有を増やす傾向にあることが示された。この結果は、救済目的の株式保有が行われている可能性を示唆している。
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