1.文献サーベイ 日本と外国の学会誌に発表された企業合併と株価の関係を実証的に調査した文献を調べ、整理した。この結果、日本企業の合併に関する研究は比較的少ないこと、1980年代に数件の研究がなされた後、理由は不明であるが、1990年代にはほとんど実証研究はなされていないこと、2000年代に入ってから数件の研究がなされていることがわかった。 2.企業合併事例の調査 1990年代の合併事例に関して『会社四季報』、『日経会社情報』で調査を行った。 3.予備的な分析 1999年に合併を公表した事例について予備的な分析を行った。合併公表20日前から合併公表20日後までの株価の累積異常収益率(CAR)は、合併企業が13%であり、被合併企業が4%であった。合併企業も被合併企業も公表の2日前から1日後までの異常収益率がきわめて高いという特徴があった。 4.株主価値を重視するMBOの調査 近年、子会社の独立や売却が多数行われるようになった。そうした中で子会社独立の一つの手法として、子会社の経営陣がMBOファンドの助けを借りて親会社から子会社を買い取るMBOという手法が注目されている。わが国におけるMBOの特徴を探るためにMBOファンドに関する調査を行った。その目標および特徴から株主重視の経営の現れとしてMBOの動向を解釈することができることがわかった。 5.年金資産の投資先としてのMBOファンドの調査 わが国の年金資産運用はここ数年、株式市場の低迷からよい運用成果が得られていない。このような環境下において、ヘッジ・ファンドなどを代表とする従来の資産分類には当てはまらないオルタナティブと呼ばれる資産が注目されている。MBOファンドへの投資もオルタナティブ投資の一つであり、年金資産の投資先としてどのようなリスク・リターンの特徴があるか調査を開始した。
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