研究課題
基盤研究(C)
研究成果として以下の3つを研究成果報告書としてまとめた。1.日本社会における株主重視への意識変化と合併公表時の株式価値上昇1990年のバブル崩壊後、日本企業はかつてない厳しい経済環境を体験してきた。この結果、徐々に株式価値の毀損が企業存続の危機につながることを日本企業がようやく実感したと考えられる。本研究では、株主重視の考え方が1998年以降に急速に普及したことを、「企業価値」「株主価値」を含む新聞記事の件数の急上昇から確認した。また1998年と2004年について、企業合併公表日における株式価値の上昇を比較した。結果として、1998年には市場全体に対して相対的に3.2%下落したのに対し、2004年には市場に対する相対変化が3.6%の上昇となった。2004年には企業経営が株主価値の上昇を考慮してM&Aを実行するように変化してきたと考えられる。2.日本企業の統治構造と企業パフォーマンス本研究は、「もの言う」投資家の存在が企業パフォーマンスに与える影響を調査している。調査年度は1996年と2000年の2年である。東証1部上場企業を対象として機関投資家(外国人投資家と投資信託を管理する信託銀行)の持ち分比率と企業パフォーマンスとの関係を調べた。企業パフォーマンスは、トービンのqとROAで計測した。結果として、機関投資家の持ち分比率が大きい企業ほど企業パフォーマンスがよいこと、そしてその傾向が1996年から2000年にかけて強くなったことを確認した。3.企業資産の部分売却の公表が株式価値におよぼす影響について1.の研究が企業買収を対象としたのに対して、本研究では資産売却(ダイベストメント)公表時の株式価値変化を調べた。1998年以前を調べた先行研究では、株式価値の上昇が認められなかったのに対して、本研究では1998年から2004年までの62件のケースから資産売却公表日に市場全体に対して相対的に2.7%の株式価値上昇があったことを確認した。また、財務危機にある会社の方が株式価値の上昇が大きいことも明らかにした。
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研究年報経済学 (印刷中)
The Keizai Gaku, Annual Report of the Economic Society, Tohoku University (being preinted)