新規事業の価値評価は、既存事業に比較するとはるかに難しい。それが困難性を有する最大の原因は、新規事業の価値の大部分が、「その事業自体から直接期待されるキャッシュフロー」よりも、「将来の投資機会を獲得する権利」や、「経営的意思決定の柔軟性」に基づくものだからである。このような認識の下、本研究が目的とするのは、代表的な価値評価手法であるDCF法によっては評価が難しい上記の権利や柔軟性の価値を、金融オプションの評価手法であるオプション価格モデルを用いて算定することである。 平成14年度中の取り組み内容、ならびに研究実績は以下の通りである。 (1)新規事業の類型化 ベンチャー企業、第二創業の途上にある中小企業、大企業が手がける新規事業等の調査研究を通じて、新規事業をキャッシュフローの時間的パターン、リスクの種類や時間的推移、意思決定の柔軟性の性質や程度等の基準により、いくつかのパターンに類型化した。 (2)オプション価格モデルの抽出と構造分析 これまでに発表されてきたオプション価格モデルの中から、新規事業評価に貢献する可能性のあるモデルを抽出し、それがどのようなモデルの構造になっているのかを分析し、新規事業の各タイプとの適合性について検討した。 (3)ベンチャーキャピタル、事業会社、大学等のベンチャー企業評価手法の調査 ベンチャーキャピタル、事業会社、その他新規事業に取り組んでいる組織が実際に用いている企業評価手法や事業評価手法を調査することにより、それぞれが新規事業のオプション性をどのように捉え、それをいかなる形で評価に反映させているのかを分析した。
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