バブル経済の崩壊は旧来からの日本経済のシステムおよび企業制度に大きな変化をもたらした。日本経済は、かつての高度経済成長を牽引したさまざまな「日本特殊的な」要因が、一転して、長期にわたる不況の元凶として取りざたされるという皮肉に見舞われたのである。しかしながら、1990年代以降の日本は、経済実績としてはたしかに「失われた10年」という苦渋を余儀なくされたものの、経済システムおよび企業制度の変革の面では大きく変貌を遂げたのである。グローバリゼーションおよびIT革命の波浪も加わって、この間において数多くの法改正・制度改正が行わたことは重要である。とくに、企業内制度や企業間関係における変化には顕著なものがあった。 また、企業間の連携やM&Aの動きにも大いに注目すべきである。それらの多くは、従来の系列関係をはるかに越えて、それを破壊しながら、進展しているのである。 こうした近年の企業制度や企業間関係などの動向は、日本経済の全体が構造調整の段階にあることを如実に示している。本研究では、本年度はまず、こうした激しい変化の実態について事実関係を整理して、その方向性について考察した。本年度はまた、持株会社の設立状況およびその役割に関してデータ・ベースを作成した。とくに、持株会社に焦点を当てて、企業内制度の変化や、コーポレート・ガバナンスあるいは企業間関係の変貌に関する具体的な情報を収集した。また、そこにおいて持株会社という制度が果たした実際の役割を分析した。今日では、持株会社設立の動きは、かつての金融関連業界中心から一般産業界の諸企業にまで広く用いられるようになっている。さらに、企業間の連携やM&Aの動きにおいても持株会社は重要な関係をもって作用したのである。こうした状況に関する利用可能かつ包括的なデータは整理されていないため、次年度はそれらを用いて成果を上梓することとしたい。そのタイトルは『持株会社の時代』を予定している。
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