最近の日本経済の状況は、企業間の結合関係における変化の進展が予想以上に早く大きいことを示している。とくに、M&Aや企業間提携の近年の活況はコーポレート・ガバナンスの内容に大きな影響を与えることによって、日本の経済システムの全体を新たな段階へと、すなわち、これまでの「法人資本主義」から「株主資本主義」へと、向かわせているように思われる。 本研究では、一方における「産業融合」と他方における「企業分解」の現象について、持株会社の利用を軸に観察することによって、新時代の企業間システムのあり方を探ってきた。そこから得ることのできた含意は以下の通りである。 (1)近年の「大変化」の直接のスタートは1997年の独禁法改正(持株会社の半世紀ぶりの解禁、および合併の容易化)によって切られた。(2)さらには、90年代以降の「企業経営の自由化」を目的とした相次ぐ規制緩和や法制度改革の結果でもある。その意味から、90年代は必ずしも「失われた10年」ではなかった。(3)持株会社は企業統合(経済力集中)の手段として使われる他に、個別の企業組織の内部再編の道具としても活用されている。(4)この間、産業融合の現象は情報関連産業や金融関連産業などにおいて顕著に進展しつつあり、関係企業の間での統合や提携(「企業分解」)を伴ってきた。(5)企業分解の現象は、業績不振企業による不況脱出策としても現れたが、また国際競争力の涵養を目的とした「本業回帰」「選択と集中」の戦略とも関連している。前者の場合は景気好転によって終結する一過性のものであったが、後者の場合は企業の戦略的な動きそのものであり、今後も進展するものと考えられる。
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