研究課題
基盤研究(C)
バブル経済崩壊後の目本経済は、何よりも企業の制度改革およびその戦略行動の面で従前のものと大きく変貌した。1997年の持株会社の解禁はそのことを象徴する変化であった。本研究では、とくに「持株会社」を用いた企業間関係の実態を明らかにすること、それがもたらした産業の境界変更(すなわち「産業融合」)について分析すること、そして新しい現象としての「企業分解」について調査することを課題とした。まず、持株会社を用いた企業間関係については、合併代替策としての産業再編型の持株会社の設立が続いている。メガバンクの相次ぐ誕生だけではなく、同業種企業による水平的な、あるいは異分野企業とのコングロマリット的な企業間結合が持株会社を手段として続いており、直接的なM&Aの横行と並んで、日本経済に企業再編というエキサイティングな状況を生み出している。また、組織再編型の持株会社も相次いで設立されるようになり、親子型の企業グループの内部組織の再編がさかんとなっている。これには、商法改正による会社分割、株式交換、連結納税制度などの関連法整備の進展が寄与している。こうした企業の統合は、必然的に「産業」の融合化をもたらしていることが重要である。とくに、金融業や情報関連産業において顕著であり、「日本標準産業分類」においても新しい「産業」が登場している。また、金融業ではすでに銀行・証券・保険などを融合する金融コングロマリット法すら準備段階に入っている。また、こうした企業の統合や産業の融合現象と同時並行的に、企業がその事業単位ごとに「分解」され、他企業との部分提携に入る現象が進んでいることは興味深い。長期不況の中で、企業は自らを改めて事業単位の集合体としてとらえ始めており、「本業回帰」や「選択と集中」の行動の中で、それらをスピンオフしてライバル企業との事業連携に走っている。総じて、戦後半世紀の日本経済の競争力の一端は目本特有の企業間関係に求められてきた。バブル経済崩壊後の長期不況の中で、それが激変に直面している今日、日本企業は持株会社を有効な手段として活用しており、またそれに触発されるようにして「産業」や「企業」のあり方が変動している。現在、日本経済は次の段階に向けての大きな構造変革期の中にある。
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