研究概要 |
実施した研究の内容および実績は、基本文献・資料の収集、SOHO/在宅勤務に関する研究会の実施およびインタビュー、EC等における信頼性の要件についての比較研究(インタビューおよび研究会)、海外での学会報告(第4回/第5回国際テレワーク学会)であり、これらの研究から明らかになった点は、以下のとおりである。 1.テレワーク・SOHO・EC等においては、まずは、情報ネットワーク上の信頼性の確保が、これらを進展させる上でまず重要な前提となる。しかし、それぞれに、信頼形成プロセスは、異なる。 2.まず、テレワークでは、雇用者ということであるから、上司と部下、同僚どうしの信頼関係が構築されている場合には、在宅勤務・モバイル等は問題はない。しかし、SOHOでは、仕事の依頼者と受け手、仕事の協働遂行者どうしは、必要に応じて形成されるわけで,信頼を構築する仕組みが必要である。SOHOで、高い信頼性を獲得し、成功している方々の話から、ふたつの条件が抽出された。第1は、依頼された業務において、高い質を維持することである。この結果、SOHOでも、高額の受注を受けることができるようになる。在宅ワークでは、この要因が充足できないことから、単価の値崩れが発生する。第2には、SOHO同士でチームを形成することである。このことが、多様な仕事を受注可能として、仕事のムラへの対応策となり、不安定さの克服となる。 3.ECが普及するにあたって、B to BとB to Cの取引において、必要とされる信頼性の高さは異なる。B to Bでは、一度の失敗が、その後の信頼性に結びつくため、高度な信頼性がネットワーク上でも必要となる。しかしB to Cでは、取引上で問題が発生したとしても、それを保障する制度を設定して、顧客の信頼性を確保することが可能である。これらは、中古車販売やネットオークションの事例から明らかにされるものである。 4.信頼性は、social capitalでもあり、ビジネスのソフトインフラである。この信頼性が高い社会においては、情報ネットワーク上でも、他者に対する疑義をかけることなく、ビジネスが展開できる。日本社会の信頼性の高さは、薬売りの先用後利に代表されるものである。このsocial capitalの相違が、ECやSOHOなどの展開にどのような影響が与えられるかについての各国別の比較研究はほとんどなされていない。ひとつの分類枠は、個人主義・集団主義において、信頼関係の構築プロセス・維持メカニズムは異なることがわかっている。
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