1990年(Vol.23-1)から2002年(Vol.36-1)までの組織学会編『組織科学』(白桃書房)に掲載された論文より、主題、著者名、所属機関、キーワード、参考文献ならびに注についてのデータを入力したが、そのうちの(1)執筆者、(2)論文タイトル、(3)キーワード、(4)注・参考文献についての(単語の)出現回数を求めるに留まった。 まず、(1)執筆者についてだが、対象期間の51号(冊)にわたり340名の投稿があった。そのうち281名が1回のみの掲載で、2回が38名、3回が11名、4回が6名であった。それ以上は各1名で、野中郁次郎(一橋大学-9回)、日置弘一郎(京都大学-7回)、高橋伸夫(東京大学-6回)、今田高俊(東京工業大学-5回)となっている。ちなみに、同誌は平均1巻につき4号で構成され、1冊(号)には平均6.7本の論文が掲載されている。 次に(2)論文タイトルについてだが、当然、組織(55回)、システム(27)、企業(23)、日本企業(20)、マネジメント(17)、ネットワーク(16)、モデル(11)などといった語句が入った論文が多い。これは、(3)キーワードについても同様で、システム(45)、組織(41)、ネットワーク(31)、モデル(28)、企業(23)、理論(16)、情報(13)、キャリア(11)、プロセス(11)、リーダーシップ(11)、情報技術(10)、支援(10)、知識(10)と続く。とくに関心を引くものに、アイデンティティ(9)、学習(9)、ボランティア(8)、NPO(8)、コミットメント(7)、組織学習(7)、アウトソーシング(6)、エコロジー(6)、文化(6)、日本的経営(6)、組織文化(6)、企業倫理(5)、自己組織性(5)などがある。 本研究の調査対象期間である1990年代全般は、わが国ではバブル経済崩壊後の不況期であるため、コンピュータや情報技術(IT)をインフラとする新しい合理的管理イデオロギーが支配的になるはずであり、それが組織研究に反映すると考えられる。例えば、上述したもの以外では、情報技術(10)、イノベーション(7)、情報システム(7)、生産性(6)、情報処理(5)、研究開発(5)などがそれを表している。また、ヨーロッパやイギリスでみられる、より哲学的あるいは批判的な研究アプローチに関連するキーワードは、『組織科学』において、わずかに近代合理主義的組織観批判(1)という語句しかなかった。
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