研究概要 |
東アジアの自動車産業は飛躍的に発展してきたが,どのようなプロセスで発展してきたのか。日本自動車企業の東アジア進出と東アジアにおける自動車産業の発展モデルとはどのような関係にあったのか。また今後どのような関係へと変化していくことになるのか。このような課題を中心に,2年間で日本企業の実態調査を行うことにしている。今年度は,タイに進出している日系企業と日本本社との間で,競争力強化のためにどのような協力関係を形成しているかを実態調査した。 1997年7月のタイで始まった通貨・金融危機のあと,日系企業は生産の現地化を一層進めるとともに,ASEAN地域経済圏において各国間で製品(車種)の棲み分けによる集中化を行っている。中国経済圏の飛躍的発展を視野に入れつつも,ASEAN経済圏がもつ統合性を前提にして,その地域である程度完結しうるような生産システムの移転を進めてきている。すなわち,研究開発機能の移転まで視野に入れた現地化戦略を展開している。しかし,研究開発機能の現地化にはまだまだ課題が多く,現段階は日本本社で代替されざるを得ない。 このような現実を踏まえると,当面のグローバル戦略としては,生産の現地化を積極的に推し進めつつも,日本本社における研究開発機能をさらに高度化していく必要がある。そのうえで,現地の顧客の嗜好に合わせた設計変更能力を現地企業が持ちうるようにしていくことが課題になる。したがって,日本本社と現地企業との間で,階層的な補完構造をどのように形成し,効率的に運営するか,ということが戦略的として検討されねばならない。次年度も,国内・国外の実態調査を踏まえながら,このような課題をさらに追求していく計画である。
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