本研究は、ドイツにおける経営のグローバル化と生産合理化の新展開というテーマの下で、ドイツの自動車メーカー、特にドイツ系ビッグ・スリーの積極的な海外展開の動向を踏まえながら、ドイツ国内での経営合理化の最近の動き【(1)チーム作業方式の展開とリーン生産方式の導入、(2)モジュラリゼーション(モジュール化)の進展とモジュール・サプライヤーからの調達拡大、(3)仕事量に応じた労働時間の弾力化と派遣労働・短時間労働者などの雇用の多様化】が持つ意味を探るとともに、これに対して労働側集合的利害代表(IGメタル・各事業所事業所評議会)がいかなる対応をしているのかを検討することを課題としている。 以上の研究課題に応えるために、11月にドイツを訪問し、以下の訪問先でのインタビューにより以下の事実を確認することができた。1)VW・ドレスデン工場:VWブランドにおける最上位クラス("Phaeton")の乗用車を手作り生産している工場(「ガラスの工場」とも呼ばれ、工場の外側が全てガラスで覆われている)において、工場がユーザーとの接点となり、工場がブランド価値構築の基盤となっていること、工場の自動化率は非常に低く、熟練工による手作り生産を中心としていること、2)GMグループのOpel社・アイゼナッハ工場:ここでは徹底して日本の「リーン生産」方式を活用した車づくりが目指されており、チーム生産方式、カイゼン活動が相当程度浸透していること、ここでも自動化率はそれほど高くなく、むしろ組織改革による生産性向上が目指されていること、3)VW・ボルフスブルク本社工場:本社工場の見学よりも工場に隣接して設置されているグループ企業のテーマパーク"Auto Stadt"がとても印象的であった。ここでも工場にユーザーを招いて工場を見学させると共に、グループ企業(ランボールギーニーやブガッティ、ベントレー、AUDIなどの)全体を通してブランド価値向上のためのマーケティング努力に並々ならぬ努力が払われている点を確認することができた。またドイツでも深刻な失業問題を克服するために、労使のぎりぎりの妥協を通して実現した「5000×5000」プロジェクトについてもSUV("Touareg")の生産自体は操業開始の準備段階のため工場見学そのものは許されなかったが、それに関する資料は入手しえた。 以上の成果の一部は、今年度、雑誌等において公表した研究発表に生かされた。
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