本研究の目的は、近年、日本の企業で進行する事業の選択と集中にスポットをあて、その日本的特質を明らかにすることである。 平成14年度は、事例の収集に力点をおいた。二つばかり紹介すると、まず一つは日立製作所と三菱電機の提携が注目された。日立が機械の自動制御装置(PLC)の事業を三菱電機に売却し、逆に三菱電機が小容量変圧器の事業を日立に売却した。日立は弱体部門であるPLCの事業売却で体質の改善をはかり、また三菱電機は小容量変圧器の売却で体質改善をはかったわけである。しかし日立にとって小容量変圧器部門は得意分野であり、三菱電機はPLCで優位にある。したがってこの相互売却は、両者にとって得意事業の強化であり、競争力の強化につながる。このような相互協力は、選択と集中において相互補完的であり、欧米のダイナミックな不採算事業の切り捨てと対照的である。こうした日本型の特化戦略は、三菱電機がPLCの事業買収にあたり、日立ブランドの製品を継続的に生産・供給するという点で、いわゆるOEM方式と呼ばれている。 次に紹介するものは、アコーデックス社の事例である。同社は、これまでの事業展開においては、研究・開発、生産、配送、販売、補修など、あらゆる機能を提供してきたが、今回の事業-パノラマサウンドシステムの商品化にあたっては、スピカーの研究開発のみに特化した。これは波及するコストの削減をはかったもので、研究開発に特化することによって、利益率の向上をはかったのである。生産・販売はケンウッドやソニーにアウトソーシングすることによって、事業体質をスリム化した。こうした日本型特化戦略は機能解体-アンバンドリングと呼ばれている。 平成15年度は、こうした日本型特化戦略の理論的研究にも力を入れていきたい。
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