研究課題
基盤研究(C)
本研究は「世界の工場」になりつつある中国の製造業を取り上げ、企業戦略論の枠組を適用しつつ、最も代表格にあげられる自動車産業と家電産業に参入して大量生産の確立を目指す中国上位メーカーの競争力蓄積の成果と問題を比較し検討した。あわせて、WTOの加盟にともない、中国製造業のダイナミックな変化、およびグローバル化を踏まえた企業行動の行方を分析した。中国の自動車メーカーと家電メーカーはともに1950年代中期に現れたが、70年代の中期まで国際比較から見れば、自動車メーカーの生産規模や技術水準は家電メーカーよりかなり上であった。その後、1970年代末の改革開放から今日までの20数年間の発展を経て、ともに政府の産業保護、政策支援を受けながら、両産業の競争力は逆転し大きな格差が現れてきた。以上の認識のもと、本研究の問題関心は次のとおりである。すなわち、WTO加盟にしたがって中国の自動車と家電メーカーの間で、顕在化しつつある競争力の格差は、どのように生じたのか、その要因はなにかである。具体的に、いままでの政府による産業政策などといった外部環境要因とともに、それぞれ産業における内部競争の度合いおよび各自上位メーカーの戦略構築過程とどのような関係があるかなどである。結論として、両産業それぞれの外部環境要因、業界内部の競争の度合いおよび各上位メーカーの戦略構築過程の差異は、それぞれ上位メーカー間に行動重心の政策適応から市場適応へ修正する時間差を発生させ、競争力の格差を形成させたことを明らかにした。まず、中国の自動車メーカーにおける競争力の蓄積は、政府の一貫した競争排除政策、とくに需要がトラックから乗用車へ移行しはじめた80年代の後半に採られた中央政府の厳しい参入制限と競争排除政策によって強く制約された。これに対して、家電メーカーに対する政府政策の直接介入は80年代の後半になると、多数の新規参入と大量生産能力の導入によって、家電製品の生産が売り手市場から買い手市場へ転換したため、ほぼ不可能になった。また、大手国有自動車メーカーは、業界の中核的な地位を占めながら、終始政府政策や計画投資の依存から抜けられないので、市場環境の変化に備える競争力の構築は大きく立ち遅れた。これに対して、80年代に後発した非国有企業を中心とする家電メーカーは、初めから政府の計画投資などに期待せず、市場ニーズに応え、厳しい国内市場競争でしのぎを削ってたたかい、市場経済の波に乗って業界の上位に上り、競争力を着々と伸ばして強くなっていた。
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