本研究は、企業が循環型社会において社会的責任として果たさなくてはならない事項として、ステークホルダーに対するアカンタビリティとして環境に関する詳細な情報の提供が広く求められるようになってきた。そこで企業が環境庁に指針に基づく環境報告書の報告内容について企業会計情報(貨幣情報)と環境パフォーマンス(物量データ)を有価証券報告書による会計情報とを融合させるための経営分析技法・解析方法を確立することを主目的とする。現在、環境コストについてさまざまな領域(マクロ的国民経済計算からミクロ的な企業会計領域)で研究されている。しかし環境コストを分析する場合、従来の企業会計領域での伝統的な会計システムの枠組みを顧みることなく公表事実のみが重視され環境報告書として公表されている。環境コストを認識する場合、従来の会計処理方法を適用した場合どのような問題点が起こるのか、また環境コストの特異性を考慮した場合の適切な会計処理方法について考察する必要がある。国際社会に通用するグローバル・スタンダードを志向した環境コストに関する会計処理方法についてその基準となる概念的枠組みを示し具体的な企業についても環境コスト情報と財務諸表情報とを融合して経営分析を行い、環境経営の進捗状況を定量的に分析することを主目的として分析を行った. この環境報告書を基礎に商法および企業会計原則にもとづき作成された財務諸表と融合して経営分析を行うには、以下の条件が前提において必要となる。(1)環境報告書が環境情報に関して真実なものかどうか。(2)環境コスト情報を明瞭に表示し、環境活動に関する判断をあやまらせてはならい。(3)環境情報の処理手続きを毎期継続し、他社および会計年度ごとの比較可能性を持たせる。(4)環境報告書を作成する場合、信頼しうる手続きによって作成し、政策目的のために真実な表示を歪めてはならない。環境コストの把握から環境報告書の作成さらに環境情報を利用した経営分析に至るまで体系的な研究がなされておらず、その概念を形成することに学術的な意義が、ここに存在した。
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