本研究は、(1)投資家が会計情報にもとづいて期待を形成しているかを実証的に検証し、(2)企業が会計測定と認識のタイミングをどのように選択するかを明らかにしている。最初の報告は、最初に、利益と簿価の時系列の株価関連性と損益計算書と貸借対照表の補完的な役割を確認している。1967-2001年の期間に東京証券取引所に上場している531社に対して、利益-簿価(タイムトレンド付き)モデルが株価の水準と変動をよりよく説明していることが明らかになった。次に、1968〜2001年の東京証券取引所上場企業のパネル分析は、(1)収益の成長性の高い企業は、資産評価における保守主義要因より会計利益の認識ラグ要因のほうが会計の保守性に与える影響が大きい、(2)配当政策に関するコンフリクトが大きい企業ほど、保守的な会計を選択する傾向にある、(3)経営者は純資産よりむしろ会計利益を過小に評価する傾向にある、ことを明らかにしている。こららの実証結果は企業結合の会計規制に一つの説明を与えている。対等合併のケースでは、経営のコントロールが確立していないので、ステーク・ホルダー間のコンフリクトが大きいと予想される。コンフリクトがより深刻な対等合併では、純資産を過大評価しない保守的な会計、例えば、持分プーリング法を選択することが望ましい。ただし、持分プーリング法は、利益操作を制限する条件のもとで、適用を認めるべきである。
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