1999年までに一度でも全証券取引所から上場廃止した会社約650社のうち昭和2・30年代に上場を廃止した会社について調査した。特に20年代初期の廃止会社の沿革は不明の会社が多い。たとえば、三海・五洋・芙蓉水産等水産、日本飼糧畜産・日本食糧産業・東洋食品等食品、愛知窯業・大成陶器等窯業、東洋映画等娯楽産業である。戦後の混乱・不況・インフレ・産業構造の変化等のために利益が減少し苦難が続く。その過程を明らかにするための資料は入手できなかった。取引所でも初期の有価証券報告書は廃棄されている。 初期の上場廃止事由は、資本金額不足、破産、解散が多い。破産・解散、合併・増減資については官報を昭和24年5月から全数調査した。決算報告についても調査したが、簡略貸借対照表だけであり、なかには「資本」「剰余金利益」等の4項目の開示で当期利益が不明な会社もある。配当率・売上高は全く入手できない。投資家は上場廃止会社に関心がなくなっている。 当研究は、証券取引所再開の1949年から1999年までの上場廃止会社約650社の財務項目を中心とする沿革データベースを作成し、経営者の努力の記録と教訓を得ることにある。研究計画にもとづき106社の報告書を作成した。すでに青山学院大学総合研究所叢書87社、平成12年度科学研究費成果報告書で120社分を公表している。また九州産業大学経営学部論集に成果を連続掲載している。現在約450社が完成している。
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