「複式簿記とは何か」。「ドイツ簿記の16世紀」に遡源することで、複式簿記の歴史性と論理性を想像ないし創造しようというわけである。 平成14年度は、イタリア簿記が移入されるまでの16世紀前半、具体的には、"Summa"に遅れること4半世紀後の1518年にH.Schreiber、1537年にE.von Ellenbogen、さらに、1531/1546年にJ.Gottliebによって刊行された簿記書には、ドイツ固有の簿記が見出されるだけに、どのように展開されたか、それぞれの背後にある「歴史性」、それぞれの根底にある「論理性」を想像ないし創造した。まずは、帳簿記録の特色として、元帳が「商品帳」と「金銭帳」に分類される根拠、さらに、帳簿締切の特色としては、「簿記の検証」が強調される根拠を解明した。内容は「平成14年度の研究実績報告書」に報告済。 平成15年度は、イタリア簿記が移入されてからの16世紀後半、具体的には、1549年にW.Schweickerによって刊行された簿記書で、イタリア簿記と交渉するだけに、どのように展開されたのか、これまた、それぞれの背後にある「歴史性」、それぞれの根底にある「論理性」を想像ないし創造した。まずは、帳簿記録の特色として、「貸借平均原理」が貫徹される根拠、さらに、帳簿締切の特色としては、ドイツ固有の簿記を敷衍するとしたら、「正味財産=期末資本」を検証するのが残高勘定であるのに対して、イタリア簿記と交渉するかぎりでは、「借方合計=貸方合計」を検証するのが残高勘定である、まさに貸借平均原理が徹底される根拠を解明した。したがって、ドイツ固有の簿記がイタリア簿記にどのような影響を与えたか、どのように同化するか、さらに、複式簿記の今日のシステムにどのような影響を与えたか、これを解明するだけの見通しだけは得られたようである。「複式簿記とは何か」、私なりの解答も、ほぼ得られたようである。
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