営利企業会計と非営利組織体の統合化に関して、研究代表者(酒井)と研究分担者(林)は、以下のような課題に取り組んだ。 1.研究代表者は、W.J.Vatterの資金会計論を専攻研究に導かれながら検討し、営利企業であれ、非営利組織体であれ、会計主体としては、私的な人格を超えた人格としてエンティティを措定することによって、商社の統合化が可能である点を明確にした。この研究成果を羽衣国際大学の機関誌『産業・社会・人間』第2号、平成15年7月刊行予定に掲載するつもりである。また平成15年度には、最近、私学助成に関して、経常費補助から特別補助へのシフトが見られること、また余裕のある大学に補助金を与えるという指摘に関連して、学校法人会計基準を考察することによって、学校法人会計と企業会計との統合の妥当性・必要性に言及する予定である。 2.研究分担者は、わが国で近年見られる特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)の活躍や、従前からある公益法人についての制度改革を背景にして、非営利組織体に係る会計基準の改革について検討を行ってきた。そして、最近の営利企業と非営利組織体との間での活動分野の融解という事実をふまえ、非営利組織体会計に企業会計方式を導入することの有用性、そしてそれに伴う両者間での会計統一化の可能性を探ってきた。この研究成果は、浜松大学機関誌『経営情報学部論集(浜松大学)』第15巻第1号、平成15年6月刊行予定に掲載するつもりである。また、平成15年度には、ここ数年の間に公表されてきた様々な企業会計基準に見られる「資産・負債アプローチ」の台頭と、非営利組織体改革で最も必要とされる「コスト意識に基づく経営」の裏付けとなる、「費用収益対応の原則」との統合化について言及していく予定である。
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