本研究では、主として近年、わが国で問題となっているNPO(非営利組織)と、それ伴う会計問題を対象に検討を行ってきた。これまでNPOにまつわるいくつかの事件の背景には、NPO会計の不首尾がその原因の一つとなっていると考えられる。そこで、本研究はNPOの会計問題を解決することによって、これからのNPOの発展に寄与することも目的としてきた。 NPO会計最大の問題点は、現金による収入・支出の事実のみを重視しすぎたことにある。このことが、NPOの放漫経営の誘発を招いたのである。そこで、最近わが国では、こうしたことを改善すべく、NPO会計にも営利企業会計の考え方を導入することが模索されている。本来、企業会計は、資本主義社会における営利企業の発展に伴って確立されてきたものであり、また「一期間における費用と収益との適切な対応」させることを根幹においている。この考え方をNPO会計にも適用することは、NPOの管理者に対し、経営資源の有効的活用、効率的経営の実施を意識づけるのに役立つと考えられるようになったのである。つまり、企業会計は営利企業のみならず、NPOにとってもまた有用であるとする見解が台頭してきたのである。 ただし、単純に既存のNPO会計に企業会計方式を導入するはできず、解決すべき課題も残されている。その代表的なものとして、株主が存在しないNPOの「資本」概念をいかに確立するかという点があげられる。ちなみに、日本の前例となったアメリカでは、この課題に直面して結局、株主の存在を重視してしまい、NPO会計改革が不十分なものに終わってしまった。そこで、われわれの当研究では、アメリカの失敗のケースも踏まえ、株主も組織に対する資源提供者の一つにすぎないと捉えることによって、むしろ組織という存在を、それ自体完全に独立したものとして重視することの必要性を唱えたのである。そして、NPOにも営利企業と同じく資本の存在を認め得ることと提案した。この提案は、NPO会計に企業会計方式を導入することが容易なものとし、NPO会計の改善につながるだけでなく、ひいてはこれからのNPOの運営のあり方にも、よい影響を与えるものと考えられるのである。
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