研究概要 |
2002年度は主に次の諸点について研究を行った; 1 可積分表現に付随する保型形式の空間の次元公式の一般論の確立.問題の次元公式は,或積分核の跡として与えられるが,その積分核を定義する無限級数の収束,及び二乗可積分性が問題である.その様な問題に関して,一般の局所コンパクト群上で一般論を展開する事が出来る.更に線形Lie群上では,可積分表現に対しては常に積分核を定義する無限級数は絶対かつ広義一様収束し有界であることが証明出来る,以上の結果は論文"Dimension formula for automorohic forms associated with integrable unitary representations"として発表する. 2 上で与えられた次元公式において,特定の放物的部分群に付随して定まる中心的羃単共役類の寄与を放物型概均質ベクトル空間のゼータ関数と結びつける(形式的)基本等式の確立. 3 上の基本等式を導くために必要な,放物型概均質ベクトル空間が満たすべき性質の研究.放物型概均質ベクトル空間の開軌道によって放物的部分群の元を特徴づけることができるかが問題であるが、そのような性質が成り立つための十分条件を幾つか与える事ができた.特にその系として,問題の放物的部分群が複素数体上極大ならばよいことがわかる.又,古典群の場合に一つ一つ調べる事により,そのような性質を持つための必要十分条件は問題の放物的部分群が有理数体上極大なることであることが示される.以上の結果は論文"Remarks on prehomogeneous vector spaces of commutative parabolic type"として発表する. 4 可積分表現の行列係数のFourier変換,及びPoissonn和公式の収束性の研究.ユニタリ表現の行列係数は有界関数だから,そのFourier変換は測度であるが,特に古典群上の二乗可積分表現の場合には,古典的なHarish-Chandraの評価から,行列係数は可積分関数となることがわかり,Fourier変換は無限遠でゼロなる連続関数である.保型形式の次元公式との関連から,そのFourier変換の非零集合を決定する事,及びPoisson和公式の収束性が問題となる.この問題に関しては,二乗可積分表現のHarish-ChandraパラメータがWeyl領域の壁から十分に離れていればPoisson和公式が収束することが証明出来た.又,正則離散系列,及びSp(1,q)の四元数的離散系列に関しては,その対角成分のFourier変形の非零集合が問題のユニタリ表現の波面集合,及び放物型概均質ベクトル空間の開軌道を用いて特徴つけられる事が証明できた.
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