研究概要 |
2003年度は以下の様な研究成果を得た; 1 可積分表現に付随する保型形式の次元公式に対する中心的冪零共役類の寄与と或種の概均質ベクトル空間に付随するゼータ関数の特殊値を結び付ける「基本等式」が成立するために必要な放物的部分群に関する条件(E)_Qについて詳しく研究した.特にHermite型の半単純実Lie群の場合,対応する有界対称領域の境界成分に付随する放物的部分群に対しては,条件(E)_Qより強い条件(E)_Cが自動的に成り立つ事が示された.一方,複素数体上で考えた場合,複素半単純Lie群Gの冪零軌道Oに付随するGのLie環の次数付けg=【symmetry】_<k∈Z>gkにおいて,|k|>2ならば常にgk=0であるならば,【symmetry】_<k【greater than or equal】0>gkに対応するGの放物的部分群に対して条件(E)_Cが成り立つ事が示された.更にGが古典的ならば,条件(E)_Cを満たす放物的部分群はこのようなものに限る事も示された.この成果は論文"Is a parabolic subgroup determined by the open adjoint orbit on the center of ita nipotent radical?"(Commentarii Math.Univ.Pancti Pauli(2003)139-163)に発表された. 2 半単純実Lie群Gの既約ユニタリ表現πの行列係数を,Gの放物的部分群Pの冪零部分Nの中心Z(N)に制限したものf_πを研究した.指数写像を通してZ(N)をそのLie環と同一視すれば,f_πは有限次元実ベクトル空間上の有界関数であって,そのFourier変換を詳しく調べるのが目標である.GがHermite型ならば,πのHarish-ChandraパラメータがWeyl領域の壁から充分に離れているとき,及びπが正則離散系列表現であるときには,f_πはZ(N)上の可積分関数である事が示された.一般にコンパクトなJordan三重系Vに付随する対称Lie環sηm(V)P=V×stτ(V)×Vの双対的自己同型ρ(x,T,y)=(-y,-^tT,-x)の固定部分環をsηm(V)^ρとして,Lie(G)=sηm(V)^ρとなるときに,充分regularな二乗可積分表現πに対してf_πはZ(N)上可積分であることが示される.このようなGとして,全てのHermite型半単純実Lie群,二乗可積分表現をもつような全ての古典的実Lie群が含まれる.πが正則離散系列表現の場合に,f_πのFourier変換の非零集合に関しての結果は,論文"Holomorphic discrete series and a generalization of Siegel's integral formula"(preprint,2003)にまとめた.
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