研究概要 |
非可換環の研究において,可換環の類似・一般化を追求する側面の正反対に,非可換特有の現象を積極的に追求する方向がある.今年度は上記研究課題の発展・応用として,後者の立場から,群の非可換環へ外部的作用について研究した.その重要性は,Kharchenkoによる素環のガロア理論やV.F.Jonesによる超有限II_1型因子環への有限群の作用の分類によって,既に広く知られている.まず柳井忠との共同研究でKharchenkoの結果を点状ホップ代数の作用に一般化した(Hopf module duality applied to X-outer Galois theory : J.Algebraに掲載予定).量子群の作用する非可換空間の単純性を特徴づける結果とホップ加群のアイデアがキイとなった.また,Jonesの結果の応用として,群の整合ペアの作用と部分因子環を結びつける泉正已・幸崎秀樹の最近の仕事(Memoirs AMS 750 (2002))があるが,これをホモロジー代数,ホップガロアの立場からやや一般的な形で整理した(More homological approach to composition of subfactors : J.Math.Sci.Univ.Tokyoに投稿中).これに,組紐図を用いてコホモロジーを論じた先の仕事(Adv.Math.173 (2003), pp.262-315)が応用されている.またこれらの研究成果を,この7月メキシコで開かれる第15回ラテンアメリカ代数学コロキウムにて,招待講演者として発表する予定.
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