研究概要 |
符号(O;e_1,e_2,e_3,e_4)をもつ数論的フックス群Γを決定することが本研究の課題のひとつである。これに関連して、本年度の研究成果について述べる。 Γは総実代数体K上の四元数環Aから定まる数論的フックス群Γ^1(A,O)と通約的となる。このような体Kの次数は高々10次となることが知られている。さらに、その判別式d(K)について、その上限D_0も計算できる。昨年までの研究により、10次代数体で中間体を含むようなもののうちd(K)が最小となるものを決定した。これは、論文"Imprimitive totally real algebraic number fields of degree 10 with small discriminant"としてまとめることができた。 さらに、今年度はKが有理数体Qとなる場合について研究を進めた。今、Q上の四元数環Aに含まれるアイヒラー整環をO_Eとし、これから定まる単数群をΓ^1(A,O_E)とする。さらに、この群のSL_2(R)における正規化群をΓ^*(A,O_E)とするとき、上記のような数論的フックス群ΓはΓ^*(A,O_E)の指数有限な部分群となることを証明することに成功した。この結果は論文"Maximal arithmetic Fuchsian groups"としてまとめることがさきた。 この結果により、符合(O;e_1,e_2,e_3,e_4)をもつ上記のような数論的フックス群Γについては、原理的にΓをすべて決定することが可能となる。
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