研究概要 |
本研究は,種々のゼータ関数の特殊値の解析的性質を,モデュラー関係式を通して行うことを目的としている.関数等式におけるガンマ因子が1つの場合には,不完全ガンマ関数係数の級数表示,モデュラー関係式,フルヴィッツ型ディリクレ級数の変形ベッセル関数による級数表示などが,ヘッケ,ボホナー,ラヴリック,バーントなどによって,個別に研究されてきた. 我々は論文"Ramanujan's formula and modular forms"において,それらはある種の積分変換や,変数を平行移動した形のメリン変換を考えることにより,簡単な微分積分で移行できることを示した.さらにその考えを発展させ,保型L-関数の場合に,正の整数点での値を,合流型超幾何関数を用いて表示できることを示した.これは急収束する無限級数であり,特殊な場合,即ちただ1つの場合が,従来よく知られていた周期関係式である.我々の公式は周期関係式を完全にしたものということが出来る.また不完全ガンマ関数係数の級数表示を利用して,リーマン-ジーゲルの積分公式も得た. また上記の積分に類似したものを考察することで,フルヴィッツゼータ関数の,分子が奇数で分母が偶数になる1より小さい有理点での値の,急収束級数表示を得た.これはラマヌジャンのζ(1/2)の大幅な拡張になっている. 一方我々は,結晶構造に付随して生ずる格子和をエプシュタインゼータ関数として捉え,そのベッセル級数表示を求めた.それがいわゆるチャウラ-セルバーグ型の表示である.この観点から,NaClやCsClの格子和のDualityや,マデルング定数の間の関係を明らかにする事が出来た. 上記以外にも,オイラー-ザギヤー型の多重ゼータ関数の正の整数点の間に,新しい関係式を見いだすことが出来た.これは現在論文にまとめているところである.
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