研究概要 |
楕円ファイバー空間の極小モデルの構成についていくつかの進展があった.底空間が一般次元の多重円板で,その座標超平面の和の外側で滑らかな射影的楕円ファイバー空間の極小モデルはモノドロミーの型に応じて以下のように構成出来ると考えられる.( 1)モノドロミ一群が無限または高々位数2の場合:モノドロミーがベキ単で座標超平面上に重複ファイバーが無い場合はトーラス埋め込みの手法で作ったモデルがある.その他はそのモデルを有限群で割って得られる商空間に双有理同値だがもとのモデルのトーラス埋め込みを与える凸体の分割をうまくとれば.商空間が良い特異点のみしか持たず,その極小部分特異点解消がトーラス埋め込みで記述出来ると思われる.これが極小モデルを与える. (2)モノドロミー群の位数が3,4,または6で,さらに座標超平面上重複ファイバーがない場合:ある特殊な楕円モジュラー曲面の定義方程式をもとにして,底空間と射影平面の直積に,標準特異点を許す意味での極小モデルとなる超曲面が構成できる.この特異点の極小部分特異点解消ができれば極小モデルを得る. (3)残った場合:(2)のモデルを有限群で割って部分特異点解消する. (1)は「モノドロミーがベキ単でなく位数が無限の場合」を除き成功した.(2)については上に述べたように,重複ファイバーの無いときは標準特異点を許す極小モデルができた.末端特異点しか許さない通常の意味での極小モデルについては,底空間が2次元でモノドロミー群の位数が3または6の場合(2),(3)のやり方で構成した.その際,特異点解消に底空間のブローアップを組み合わせるなど新しい方法を用いた.また(2)の楕円モジュラー曲面に現れるモジュラー函数をテータ函数で表示することも出来た.今後は残った場合の解析を行う.
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