研究概要 |
半整数ウェイトの場合のニューフォームの理論を構築という研究目的達成のため,今年度はまず,偶数conductorを持つ指標に関するTwisting作用素のトレース恒等式を一般のレベルにおいて証明した.これは前年度までにレベルが2のべきの時には得られていたのだが,これを一般の偶数レベルのときに証明したものである. この恒等式の形は,予想されていた通り半整数ウェイトのTwisting作用素のトレースが,整数ウェイトのヘッケ作用素とアトキン-レーナー作用素の一次結合として表されるというものであった.また,この研究の副産物として,以前から存在が予想されていたもののこの15年間未発見だったレベル64の半整数ウェイトHecke作用素のトレース恒等式を見出す事が出来た.これらについては現在その概要を論文にまとめ投稿中である. これらの結果により,ニューフォームの理論を構築するために必要とされる全てのトレース恒等式が出揃ったことになる.したがって,5年前に確立されたKohnen空間のニューフォームの理論を偶数レベルの時に拡張する事が可能となった. 現在それらニューフォームを半整数ウェイトのカスプ形式の空間から取り出すために必要とされるフーリエ係数の非零性を証明中であり,レベル4と8の場合には有限線形群の表現論を用いることにより確定させる事ができた. 来年度にかけて,全ての偶数レベルに対してこの非零性を拡張していく.また最終的には非零性が示されたものから順にニューフォームの理論を確立していく予定である.
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